結局、ポップカルチャー。

書きたいことを書きたくなったら書くブログ

小沢健二『シナモン(都市と家庭)』

f:id:naka_tako:20170923170245j:plain

 

ゆっくりゆっくり書いていたとある記事がなぜか下書きから消失して意気消沈しているため、気分直しに短めにひとつ記事を書こうと思う。

そして今日は10月31日、そうハロウィンだ。と、いうことで今日はハロウィンソングの金字塔といっても過言ではない小沢健二の『シナモン(都市と家庭)』を紹介したい。

この楽曲は2017年(つまり今年だ)に小沢健二SEKAI NO OWARI名義でリリースされた『フクロウの声が聞こえる』のカップリングに収録されている。ベースラインのうねるブラックミュージック的要素が盛り込まれたダンサブルなアレンジが特徴の楽曲だが、着目したいのはやはり歌詞である。

骸骨が街に帰ってくると かぼちゃの中に灯るロウソク

水彩の筆のオレンジで 十月の雑踏に色を塗る

と一番のAメロから、「骸骨」「かぼちゃ」「十月の雑踏」というワードが次々と飛び出すように、この曲のテーマはハロウィンをテーマに歌われている。ハロウィンという文化自体、日本で根付いたのはここ最近であり、また若者が仮装して盛り上がるという資本主義的な普及のしかたをしたこともあいまって、ハロウィンソングというものはあまり多く見受けられない。実際、私のiPodのなかを探してもハロウィンのことが曲のなかで取り上げられているのは、きゃりーぱみゅぱみゅの『Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~』と渡會将士の『月は踊るように満ち欠ける』ぐらいだ。しかしニューヨークを拠点に世界各地で生活を送ってきた小沢健二がハロウィンのことを歌うことは、自然であると言える。

 

そしてシナモンの香りで

僕はスーパーヒーローに変身する

この街のどこかで

君も今年の衣装に変身するよ

フッフッフ

歌のなかで描かれているハロウィンが現代の日本のような若者中心の文化ではなく、大人も子供も関係なく、家庭、つまりは家族で楽しむものとして描かれていることや、日本ではあまりハロウィンと結びつかない「シナモンの香り」でスーパーヒーローに変身するところも、どこか異国的な匂いがする。

 

またこの楽曲で私が一番反応してしまうフレーズが以下だ。

外国時間を計算しながら

あなたにメッセージ送ってみるよ

友愛の修辞法は難しい

恋文よりも高等で

このフレーズからなにか連想されないだろうか。そう、彼の代表曲である『ぼくらが旅に出る理由』のこのフレーズである。

 そして君は摩天楼で 僕にあてハガキを書いた

こんなに遠く離れていると 愛はまた深まってくの と

 

それで僕は腕をふるって 君にあて返事を書いた

とても素敵な長い手紙さ 何を書いたかはナイショなのさ

1994年に遠くを旅する恋人にとても素敵な長い手紙を書いていた小沢健二が、2017年現在は友人に時差を計算しながらメッセージを送っているのだ!

『流動体について』で日本のミュージックシーンにカムバックした小沢健二が、全盛期にしがみついた時代遅れのおじさんとも揶揄されていたのは事実である(私は真っ向からそれに反対したいが)。しかし、彼は“時代遅れ”なんかではなく、外国の友人にメッセージで連絡を取り合うような、今の文化にしっかり対応した今を生きるアーティストであることを、先ほどのフレーズが証明していると言える。

そう遠くない未来にリリースされるであろうアルバムで、小沢健二が作り出す現在の球体の奏でる音楽を聴くことが今から楽しみでたまらない。