結局、ポップカルチャー。

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Mom『スカート』

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才能あるミュージシャンというものは、本当にとめどなく現れる。それは聴いている我々にとってすれば幸せなことであるし、ともすればミュージシャンにとっては残酷な現実である。

今回紹介するMom(マム)もまごう事なき才能の持ち主だ。彼について僕が知り得る情報は、Twitterのプロフィールに書いてある「21歳、ラッパーでもバンドマンでもないです。」という一文だけである。でもそれだけで十分だ。彼のドロップする音楽はこんなにも素晴らしいのだから。

 

今回紹介する楽曲「スカート」は、2018年5月19日時点で、一番新しく公開された楽曲だ。もちろんこれまで公開されてきた「いたいけな惑星」や「東京」も素晴らしいのだが、「スカート」はこれから彼の代表曲になっていくと確信してしまうほどの出来栄えとなっている。

 

まずトラックがいい。シンプルなスネアのループを中心に、音数は少ないにもかかわらず、スーパーマリオのコインを取る音を加える遊び心が聴いているこちらをニヤつかせる。

そして彼の肩の力の入っていない歌声で歌われるhookが、トラックとピシャリと合っていて、思春期を超えた青年特有の静かな衝動を想起させる。

いつも見たいのは心の中

今日は余所行きの風にまかせ

隠せぬ気持ちこの胸のときめき

君のスカート

 

彼の選ぶ言葉は日常に根ざしたものでありながら、その内容は非常に概念的で抽象的であったり、叙情的であったりする。そんな彼の作詞スキルの高さが表れているフレーズが以下である。

 

きっとこの瞬間両手を広げ

無限を全身で感じたら

享楽だったり芸術に

足を取られることもないはずさ

誰でもいいから追い越して

不機嫌な雲を追い越して

もしもしいまどこ

これからもどるよ

フラワーショップで待っててよ

 

まず「無限」という抽象的でスケールの大きな事象を取り上げ、「享楽」や「芸術」という概念に言及する。このときの視点はマクロだ。言ってしまえば宇宙的である。そこから「不機嫌な雲」と、地球規模まで視点を小さくしていく。そして最後に「もしもし いまどこ これからもどるよ フラワーショップで待っててよ」と、一個人である誰かへと呼びかけるミクロな視点まで変移していくのだ。このマクロからミクロへの視点の動きの鮮やかさには脱帽するほかない。

 

作詞面のスキルの高さ、またアウトロのカッティングギターやコインの獲得音までこだわる作曲面の緻密さを鑑みると、彼の才能はどんどん世の中に発見されていくべきだと感じる。

 

「That Girl」でMom自身も

君のプレイリストに僕を加えてよ

そしたらもっと楽しい日になるよ

君のプレイリストに僕を加えてよ

I’m Just Kidding  

と歌っているように、彼の曲がより多くの人のプレイリストに加わる日が1日でも早く来ることを切に願う。

 

またYou Tube上で公開されている彼のMVはどれも過去の映像作品をサンプリングしたものであり、映像としてもとても面白く、そしていつまで公開できるか怪しいものばかりであるため、是非消されてしまう前に一度見て欲しい。

もちろん「スカート」も、二次元、三次元問わず様々なスカートを履いた女性が登場する最高のMVになっている。

 

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